植木鉢にとって不可避的な問題点は、施肥や水遣りの失敗などによる根腐れなど、管理者の責に帰すべき事由を除くと、植物体、特に根部の成長によって生じる根部と植木鉢内壁との密着により、植え替えなどの際に植物体を鉢から抜去するのが非常に困難になることである(この現象は根部の発育に伴い、根部が植木鉢内壁に与える圧力(静圧)が上昇することと根部が植木鉢内壁に密着することによる、静止摩擦力の増大による)。このような状態になると植物体を無傷で植木鉢から抜去することが非常に困難になるので、たいてい、陶磁器鉢の場合は鉢を割ったり、またプラスチック鉢の場合はハサミなどで鉢を切って除去することとなる。植物体根部の生育が著しい場合は、植木鉢の壁面に亀裂が生じたり割れたりする等の「鉢割れ」という現象が起こる。特に陶磁器鉢の場合は、根部から植木鉢内壁全周(内から外に)かかる圧縮応力(鉢の外壁側から見ると引っ張り応力)に対して、陶器や磁器は引っ張り強度が小さいので破断(鉢割れ)する。また陶磁器鉢では、鉢の壁面にクラック(亀裂)が入ってはいるが、このクラックの長さ(鉢の「厚み方向」であって壁面上ではないことに注意)が構造力学でいう「グリフィスの臨界クラック長さ」(材料の中に生じたクラックがクラック先端部の応力集中により成長するのを材料自体の弾性変形で食い止められなくなる、クラックの臨界長さ)以下のため、鉢に入っているクラックの延長線上の鉢壁が鉢の厚み方向に「弾性変形」することで、クラックが延長線上まで成長しないでいる、つまり完全には割れないでいる、という現象もよく見られる。しかし、
この「鉢割れ」という現象を逆手に取ることで、あらかじめ鉢壁が割れている鉢を作ることができる。その製法は、鉢割れを起こした鉢(前述の「壁面が完全に破断して
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いない状態の鉢」では、クラックの走行方向の延長線上を軽く叩くことによりクラックを成長させ、鉢を上手に割る)から植物体を抜去し、接着剤等で割れを補修し、鉢の外周にナイロンバンドを巻くなどして保持することにより完成する。この鉢の特徴は、根部の発育によりあらかじめ割れることである。つまり万一、鉢割れ状態になるほど植物体根部が旺盛に発育したとしても、接着剤で接合した部分が、何も処理をしていない鉢の内壁を植物体根部が割るのに要するよりもはるかに低い引っ張り応力で割れることにより、根部へのストレスが軽減されることである。このような鉢を「カチ割れ鉢」と称する。しかし見栄えの点から現在、市販はされていない。なお、植物体(根部)を植木鉢から抜去する方法としては、竹べらや薄くて弾性に富む金属板(8号鉢以上の大型株では建築用の「曲がり尺」が好結果)を植木鉢の内壁といわゆる「根鉢」の間に挿入して左右にこじることを鉢全周にわたり繰り返し、根部と植木鉢内壁との密着をはがす方法もある。ただこの方法では「根部」が痛みやすいことが欠点である。